東京にきてから数年経ちますが、仕事中に東京の不条理や憂き目に遭うことが多くありました。
そんな時に聴いたヒップホップをご紹介したいと思います。
1.shing02 – 東京の通り 「ダフ屋の手伝い」
始発電車で某駅に集合し、早朝野球のチケットを買って届ける仕事。
10000円を渡されて、買ってほしいチケットの優先順位が書かれた紙切れをもらってからがスタート。
チケット屋に着く頃には既に長蛇の列ができているけど、店の開店一時間前に抽選が行われ、並べ替えをさせられます。抽選の結果、数分でチケットを買える奴もいれば、何時間も並ぶ羽目になる奴もいます。だいたい一時間くらい並ぶことが多かったです。
http://www.youtube.com/watch?v=1qIn3dynDvc
何もかもが人造 ここはジャングル、色々な人がいるから勘ぐる
大和、ブラック、イラン、ハングル 愛国心持ってるのは外国人
ちょっとした矛盾や不純を持ってる人達が集まる街、それがトーキョー
チケットを雇い主のところに持っていき、お釣りを渡すと、
4000円がもらえるので、時給換算すれば割りはいいかもしれない。
少しだけもやもやするけど、野球興味ないからいいかとなってました。
ただ、そんな賃金を堅実に使うことはなく、もらったらすぐに消えました。
2.soul scream – tou-kyou 「メールオペレーター」
当時かなりおなじみだった出会い系サイトのサクラ。
時給が1400円くらいで時間の融通も利き、条件面では格段においしかった。
毎日あばずれた女性の振りをして男性を誘惑するメールを考え続け、サイトに金をつぎ込みまくってる奴がいても、向き合っているのは本人ではなくて端末だと思い込めば、飲み込めてました。
とりあえず、返信率の高いメールとキャラクターを考え続ける毎日のなかで、倫理観も金銭感覚も麻痺。
ある日頭使って考えた清楚で魅力的な女性キャラが、
翌日出勤したら深夜勤務のやつらの仕事でヤク中の設定にされてたのがまじでむかつきました。
鳥の視点から見下ろすこの地点 広がる群れをなす人間達
分ち合う力得る道端 自分の立場より遠い彼方に存在する路地裏 寝転がる姿
語るまだ明日がある
自分とのギャップ 感じる小細工などする者すら皆無
百獣の王ならば取って喰う 悪循環すら見せる
数十億の群れの秩序より実情で成り立つこの場の日常
とにかく韻が秀逸な作品。
次第に自分がやってることとかよくわかんなくなってって、数ヶ月働いたある日ふと、罪悪感にやられて辞めました。
3. NUMBER GIRL – TOKYO FREEZE 「風俗」
友人の友人が、上京して、何を思ったか風俗店の店長になりました。ある日、仕事を探していた私に連絡があり
「過労で体調を崩したから代わりに働いてほしい」
ということで始めました。
店は雑居ビルのホテヘルで、朝から開店するまあまあの人気店だった。
9時に入り、10時に開店、16時頃からピークタイム。終電近くに帰る。それが週6日。
バイト希望の女の子の面接、研修担当は別にいて、それがどういう類の方なのかは割愛。
女の子に嫌われたら終わりだから、どんだけむかつくことがあってもにこにこと媚を売らなくてはいけない。仕事である以上当然だけど、客に対しては礼儀正しくする。
何より、そういう類の方からの重圧が辛かったです。
毎日、店を閉めるときに恐ろしい額の万札を数え、収入はそのうち一枚。
情けない話、数日で胃に穴が開きました。仕事以外の時間はずっと飲んでて、一番ひどい時は地下鉄で飲んでました。ある休日、胃痛をこらえながら喫茶店でコーヒーを飲みながら不意に出た涙が止まらなくなって恥ずかしかったです。
戦場 いってみればこの街あたりもそう
煽情 果てることない 暴力衝動
諸行無常 武装した夕暮れが行き着くところ
極東最前線
店長の体調が戻り次第、速攻でやめました。
4.ECD – SHIBUYA ANTHEM feat HOWLING UDON 「WEB運営」
WEB制作の勉強をしようと思い立ち、求人で見つけたバイト。
条件は9:00から17:00で日給1万円程度。
とんとん拍子で採用がきまったけど、面接の時に気になる点がいくつかありました。
「何を取り扱う会社なんですか?」
「んーそれは、明日説明しますね」
という問答。
それに加え、無断欠勤は罰金10000円というルール。
その二つがすこしだけ引っかかって翌日、勤務初日、私が任された仕事は「マルチポスト」
「あの有名女優のオ●ンコ丸見え!」
という文言とURLを、有名人のブログのコメント欄に次から次へと投稿する。
他の人たちはFlashを作っていたりする。
Flashはデーンと
「あなたのIPアドレスを記録しました。3日以内に下記口座へ入金をお願いします」
という文言が表示される。
鵜呑みにした人が焦ってお金を振り込む。
そういうシステムで会社が回っているらしかった。
こ、これがWEB運営なものか!!!
風俗の仕事の直後だったこともあって非常にこたえ、勤務初日に駅のホームでうずくまって泣いた。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10318683
普通じゃいいられないどうしよう
ふざけないで生きてきたいよ
次の日から行かなくなって、電話が鳴り続けましたがひたすら出ませんでした。
5.いとうせいこう & TINNIE PUNX – 東京ブロンクス 「クレーム対応」
これは鬱バイトという事ではないですが、いままでの職で一番変だったといっていいので記します。
ある日、某社のPC製品に欠陥が報道され、内臓の電池が発熱し、火を噴いたり爆発したりするという欠陥でした。
もちろんそれはPCを作ってる会社の責任問題ですが、そのPCの電池は別会社が作っている。
そこで、電池の製造会社側にクレームやお問い合わせがきた時に
「その件につきましてはPCメーカーの●●にお問い合わせください」と
丁重に案内するためにひと月だけ臨時で組まれた部署。
そこに勤めました。
「お問い合わせやクレームが全然来ないかもしれないし、恐ろしく来るかもしれない。反応が全く分からない」
面接ではそう言われて正直状ビビりました。
部署は5人チームでした。
結論から言うと、ひと月が過ぎた時、問い合わせでかかってきた電話の件数はトータルで1件。
つまり5人はその1件の電話を取るために毎日出勤していたわけです。
日給1万×20日×5人 = 100万
それ以上の金をかけて、1件。
雇う側からしたらかなり割に合ってないけど、大手というのはそれくらい万全を期して臨むというのがよく分かりました。
5人は毎日暇でした。
暇が過ぎて、携帯をいじりはじめる。
社内にあった本を読み始める。
そして、その本すら全部読み終わる頃にマネージャーが言いました。
「家から本とかなら持って来ていいですよ」
毎日読書をしているうちに睡眠すら許可が出ました。
永遠のように続く時間、鳴らない電話。密室に退屈が充満する。脳がどろどろになっていく。
そしてある日ついに、マネージャーがトランプを買ってくれました。
こんなバイトはまるで知らない
屋根も柱もブースもない
ミラーボールもレーザービームも
レジもクロークもない
ラジオもない電話もない
あっても受話器は誰もとらない
ALL FREE ALL NIGHT
トランプって……「ALL FREE」にもほどがあるだろ
帰り道で反芻して
「フフフ、フフフフフ」
と気が狂ったような笑いがこみ上げてきた。
以上です。
皆さん、仕事探しはくれぐれもご慎重に。
