知識ゼロから聴き始める電子音楽(ブレイクコア編)

未知のジャンルを無理やりノーヒントで探索させて未知なりにレビューさせるシリーズ第一回は「ブレイクコア」です。

「電子音楽」と聞いて、テルミンとかムーグ・シンセサイザーが思いついた。
どうやら違うらしい。「ブレイクコア」について書けと言われた。
「ブレイクコア?」どうも、知識ゼロから自力でネットを駆使して調べてレビューを書けということだ。
ちなみに筆者は東京都在住、23歳男で音楽は好きだしCDとかレコードもたくさんもってはいるけれどふだん聞く音楽はわりとこういう

http://www.youtube.com/watch?v=usxi3mk1k3g

なので21世紀の音楽事情には疎い。

「ブレイクコア」
いかにも、なにか壊しているようなかんじではある。
想像では、前身白塗り、長髪、入れ墨のマッチョな男どもが「虎よ! 虎よ!」なんて叫びながら
観客を殴ったり反吐をぶちまけたり機材を壊したりレイプしたり生肉をむさぼり食ったりしている。
ちょっとそんなのは嫌だな。
でもまあ偏見をもっていても仕方ないので、とりあえずwikiることにする。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ブレイクコア

中立的な観点に基づく疑問というのが少し気になるが、少なくとも社会問題については載っていないので、
とりあえず非合法ではないようである。そこはまあ安心してもいいところだ。


まずは一番代表的な人から聞いてみるのが手順だろう。
記事によれば、Venetian Snaresなる人物が有名とされているので、YouTubeを開いてコピペ。
いちばんさいしょの曲を開く。

1.Venetian Snares – Szamár Madár

あ、でもけっこうカッコいいかもしれない。
クラシカルな弦楽はクロノス・カルテットみたいだし、つんのめったビートも疾走感あってかつ不安定だし引き込まれる。
1:35からのくだりで一瞬心臓がとまりかけるのは、たしかに、テクノロジーに依存している我々がこういうものを不意打ちされるとそれまで当然と思っていたものが一瞬で異化されて恐怖感というか疎外感にほうりだされてしまうからで、
我々の日常なんて一歩足を踏み外すとこういうところに落ち込んでしまう薄氷のうえに住んでいるようなものだ。
調べていると、ブレイクコアというジャンルじたいネットにかなり依存していて、サンプリングネタをネット各所からダウンロード、
盗用して使っているため、ネットがなければほとんどなりたたないそうだ。
この演出はそんな状況を作品の側から異化するためのカウンターのようなものだと解釈しておそらく差し支えあるまい。

最初の想像とちがって意外とシリアスなことをやっている。非常にもうしわけなく思う。

しかしもうちょっと気楽に聞けるようなものもないかなと思って、どうやらブレイクコアはオーストラリア発祥らしいので、
「ブレイクコア カンガルー」で検索。あんまり実入りがなかった。
「ブレイクコア コアラ」にしてみる。いろいろやってるうちに、「Kid Koala」なる人物を発見。これは聞くしかない

2.Kid Koala – Moon River

おお、ムーン・リバーだ。このいかにもコアラめいたのがKid Koalaか。なごむ。
そしてよくわからないがいかにもテクニシャンくさい。だんだんかっこよくみえてくる。
このスタンダードを完全に素材化してしまうかんじは面白い。もはやパブリックドメイン的な音源で遊び倒すということ、しかもそれがベビーブーマー時代のものだということにはある特殊な感覚がある(「ムーン・リバー」は1961年発表の曲)。
戦後アメリカの好景気、小遣いをもちはじめたティーンエイジャーたちが「若者文化」というものをはじめて構成したのがそのあたりからだ。そうしてそこには映画やレコード、ラジオといった複製メディアの発達が関与している(技術の発達によって廉価になった)。いわゆる「ポップカルチャー」は複製技術のうえにしか成り立たず、その萌芽である戦後の時代というのは黎明期独特の存在感をもって現代のポップカルチャーにも化合しうる。

でもこれは、おそらくだけど、きっとブレイクコアではない。

だいたい新ジャンルを開拓するときは「◯◯ 名盤」でググるので今回もそれをやってみる。
それでみつけたのがこのページ

http://www.koiwa-disco.com/?pid=10424401

すごくしっかり書いてある。これはどうやら信頼できるかんじだ。早速このアルバムからの曲をYouTubeで検索

3.Cardopusher – Show Me Your Pussy Massive

http://www.youtube.com/watch?v=oKOEXcEgVWk

うーむ、こういう政治主張の感覚か。
サウンドなど、たしかにカッコいいかもしれないけれど、どうもこのMAD風なノリでこういった主張をされてしまうと、
それはどうも我々日本人の肌には合わないように感じてしまう。映像も含めて作品だ、しかたない。
第一、ほんとうはもうちょと気楽に聞きたいのだ。

そこで、きっと日本人のブレイクコア・アーティストなら日本人の肌として合うものになるにちがいない、という期待をかけて
「ブレイクコア 日本人」で検索

http://nuppe.blog59.fc2.com/?tag=%A5%D6%A5%EC%A5%A4%A5%AF%A5%B3%A5%A2

インパクトが強いのでこの人を聞いてみることにする

4.OVe-NaXx – OVEKEYASHIKI

おお、同じ悪趣味でもこういうのはいける。
とぼけているかんじが和風フランク・ザッパとでもいったようなディープでカラッとした変態具合でいい。
映像の、どこかヤン・シュヴァンクマイエルも思わすような、ふざけたような悪趣味アニメも遊んでいて、このメタレベルに立っている感覚がいっそうグロテスクでかつ楽しいじゃないか。短いのがもったいない。もっと聞いていたい。
このかんじを掘り下げていったらきっとおもしろいにちがいない。

シュヴァンクマイエルからの連想だが、ひょっとして東欧のブレイクコアなんて、変わったものがあるんじゃないか?
「ブレイクコア チェコ」で検索をかけてみると

http://bridge.shop-pro.jp/?pid=27113886

ロシアの人だが、チェコに移住して活動しているらしい。さっそく聞いてみる

5.Airborne Drumz – Biohacker

再生数少なっ(執筆時200回)
こ、これがロシア人か。ハードコアすぎるだろ。
そうしてなぜだかずっと笑いが止まらなかったというのは、よくわからないが、なんだか爆笑してしまったのだけど、
そう書いたら好きなひとから怒られるだろうか。

いや、だって、なんかメタルだし、ぜんぶの音が想定の斜め上をいくんだもんなあ。
ほら『マトリックス』劇場でみたときずっと爆笑していたでしょう。マイケルのダンスを初めてみたときも、笑いがこみあげてきたでしょう。ゴルゴとかドラゴンボールのさいごのほうとか、笑いなしにはみられないでしょう。産まれてきたとき笑っていたでしょう。堕ちていくとき笑っていたでしょう。誰を怨めばいいのでございましょうか。笑っているときは幸せなのでしょうか。
笑っているだけでは生きていかれないでしょう。それでも笑い続けるしかないでしょう。
人生の酒と泪は笑い上戸でしょう。ahahahahahahahahaha

結論:けっきょく日本人のが肌に合う